2023-06-01から1ヶ月間の記事一覧

戸塚秀夫「日本帝国主義の崩壊と「移入朝鮮人」労働者──石炭産業における事例研究」について

最高気温32度にもなった今日、蔵書整理のために、辻堂の冷房なしの作業場に詰めていた。暑い。整理中、ふと隅谷三喜男編著『日本労使関係史論』(東京大学出版会1977)が目にとまった。かつて夢中になって読んだ研究書である。 目次は次の通り。 第1章 工場法…

杉森久英『滝田樗陰』

杉森久英『滝田樗陰』(中公新書1966)読了。本名哲太郎の滝田樗陰は秋田市1882年の生れ。樗陰の号は高山樗牛に因むものという。 東京帝国大学在学中から雑誌「中央公論」の編集にたずさわり、同大中退後、『中央公論』の編集者として、文芸欄の充実に力を尽く…

藪田貫『大塩平八郎の乱』(中公新書2022)

藪田貫『大塩平八郎の乱』(中公新書2022)読了。大塩の乱については、限られた史料ながら手堅い推論としっかりした文体でもって人物と事件を描き出した、幸田成友『大塩平八郎』(中公文庫;1910年)が古典である。森鷗外の歴史小説は幸田に依拠したものである。…

田中綾『非国民文学論』の明石海人論

田中綾『非国民文学論』第1部「非国民文学論」の第2章「〈幻視〉という生ーー明石海人」は、ハンセン病文学者・明石海人というこれまでのイメージを超える圧巻だった。もっと言えば「ハンセン病文学者・明石海人」という観念を超出する「文学者・明石海人」…

河谷史夫『記者風伝』

河谷史夫『記者風伝』(朝日新聞出版2009)。新聞連載時に読み、本も揃えたが積読のままだった。 本書は「羽織ごろ」と題する次の文章で始まる。ーー《新聞記者は、むかし「羽織ごろ」と呼ばれたそうである。その言葉を子供のときに聞いたと、大正生まれのコラ…