河谷史夫『記者風伝』

河谷史夫『記者風伝』(朝日新聞出版2009)。新聞連載時に読み、本も揃えたが積読のままだった。

本書は「羽織ごろ」と題する次の文章で始まる。ーー《新聞記者は、むかし「羽織ごろ」と呼ばれたそうである。その言葉を子供のときに聞いたと、大正生まれのコラムニスト山本夏彦翁が『笑わぬでもなし』に入れた「羽織ごろは死なず」という文章に書いていた。「立派ななりをして、表玄関からはいって、天下国家を論じて、結局はいくらか出させる。下等なものはその場で、上等なものはあとで出させる。それなら羽織着たごろつきではないかというほどの意味で、新聞記者のことである」》

本書は「羽織ごろ」と見られることを受け止めつつ、戦後のある時期に輝いていたように見えた新聞の記者24人の小伝である。

読後感ーー〈やつしの精神〉を忘れてはならない。出版もまた。