沼田流人『監獄部屋』1928年の発禁をめぐって

【沼田流人『監獄部屋』1928年の発禁をめぐって】

 沼田流人の『監獄部屋』(金星堂、1928年5月)は発禁となった。こんにち、その発禁となった『監獄部屋』の内務省検閲本が、国立国会図書館デジタルライブラリーにより無料で、またAmazonKindle版により有料で、制約なく見ることができるのは、まことにありがたいことである。

 この『監獄部屋』内務省検閲本は、戦後にGHQによりアメリカに移送され、その後日本に返還されたという経緯がある。(GHQの管理となされなければ、日本のお役人により廃棄処分となったおそれもあったのではないかと推察する。)

 わたしが購入したAmazon Kindle版では、その見返しに「佐伯」と捺印した上、発禁とすべき理由が手書きされている。

《坑夫生活ノ内面生活ヲ描写セルモノナルモ余リニ惨虐非道ニ就キ 禁止可然哉》

このようにして上司にうかがいをたて、「風俗壊乱」と判断され、発禁となったと思われる。