タコ部屋の飯を食った作家佐左木俊郎

【タコ部屋の飯を食った作家佐左木俊郎】

「見そこなうな。おれは、北海道でたこ部屋の飯をくった男だぞ」 ーーこう凄んだのは、わたしの遠縁の新潮社編集者兼作家の佐左木俊郎(1900-33)である。同じく新潮社に勤めていた和田芳恵の『ひとつの文壇史』講談社学芸文庫に出てくる。

 1930年前後、佐左木が文学雑誌『文学時代』の編集を担当していた頃。北海道のタコ部屋が世間を騒がしていた最中であり、佐左木俊の凄みは、顔付きと相まって、相手を圧倒したに違いない。(しかし、佐左木は、10代に北海道にはいたが、タコ部屋飯を食ったことがあったのだろうか?)

以下、和田芳恵からの引用:

《「文学時代」の末期に、東京の盛り場をあつかって、町の顔役に社へあばれこまれたことがあった。編集実務を担当していた佐左木俊郎さんが応対したが、応接用の丸いテーブルにあいくちを突きたてて、相手はさかんにすごんでいた。農民作家の佐左木さんには、このおどしが通じないので、うやむやのうちに引きあげるより仕方なかった。  佐左木さんは、そのとき、 「見そこなうな。おれは、北海道でたこ部屋の飯をくった男だぞ」 と、相手に啖呵をあびせたまま、にらみすえて、あとはひと言もいわなかった。》